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寄稿

【連載】女性による超高齢社会のための女性のライフデザイン ~曖昧模糊とした女性の生き方の全容を探る~【第2回】

第2回:女性のライフコースと世代間のギャップ & 第3回以降のテーマ紹介

 連載の第1回では"L90(*)"(女性のライフデザイン研究会)での活動と、女性のライフデザインの全体像についての議論を紹介した。第2回では女性のライフコースと世代間のギャップを見ていく。そして最後に次回以降の個別テーマの議論の枠組みを紹介する。
 (*)"L90"=人生90年時代のLadies

  


  【第2回編集担当】株式会社富士通総研 経済研究所 倉重佳代子   

  【調査分析担当】株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント 真坂美緒

 

1. 女性のライフコースの多様性

 

1.1 女性の就業と「M字カーブ」

 

 第1回で見たように、女性には就職、退職だけでなく、結婚、出産、離別、介護など様々な人生の転機が訪れる。そしてそれらは互いに影響しあっている。女性の就業率が結婚・出産に大きく影響されることを示す「M字カーブ」はその好例だろう。ご存じの方も多いだろうが、「M字カーブ」とは図1のように女性の就業率のグラフの形が年齢に沿ってM字型になることを言い、結婚・出産によって仕事を中断する女性が多いことを示すものである。多くの先進国では既にこのような傾向は見られなくなっているが、日本では男女の雇用格差を端的に示すものとしてよく引用される。しかしその日本においても、図1に見られるように過去20年間でM字の形は大きく変わってきた。M字の底は15ポイントほど高くなり5歳ほど右に移動している。晩婚化・非婚化・晩産化などの影響もあるだろうが、2012年には各年齢階級で労働力率が高くなってきており、結婚・出産を経ても働く女性は確実に増えてきていると言えよう。

 

 

図1.png

(厚生労働省「平成24年版 働く女性の実情」(資料出所:総務省「労働力調査」)よりグラフ作成)

図1 女性の年齢階級別労働力率の推移

 

 

 しかし、このM字型解消の傾向も手放しでは喜べない。なぜなら、就業の内容が結婚・出産の前後では必ずしも同じではないことが推察されるからである。図2を見てみよう。これは、1987年と2007年で、女性の雇用形態別の年齢階級別労働力率を比較したものだ。これで見ると、M字カーブの底上げ分はほとんどがパート・アルバイトや派遣社員・嘱託などの非正規雇用によるものであることが分かる。しかも、20-24歳に注目してみれば正社員の割合が15%程度低下しており、最初の就職時から非正規雇用を選ばざるを得ない実情が窺える。つまり、女性のキャリアという視点から見れば、必ずしも最初の就業を継続しているわけではなく、結婚・出産を機に非正規雇用に転じている例が多いことが想像できる。正規雇用で就業継続する場合と非正規雇用に転じる場合とでは仕事の内容においても待遇面においても大きな違いがあり、これは女性のライフデザインにも大きく影響すると考えられる。

 

 

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(国土交通省「国土交通白書2013」(資料出所:総務省「就業構造基本調査」)よりグラフ作成)

図2 女性の雇用形態別年齢階級別労働力率の比較:1987年と2007年

 

 

 

1.2 女性のライフコースの特徴

 

 このような就業状況が現実のものとしてある中で、女性たちはどのような人生をたどっているのだろうか。この問いに対してより具体的なイメージを得るため、リコー経済社会研究所の栗林氏、ニッセイ基礎研究所の井上氏による女性のライフコースに関する研究結果を参考にさせていただき[1]、栗林氏からはご講演もいただいた。
この研究では「個人が生まれてから死ぬまでの間にたどる人生の道筋」を「ライフコース」と定義する。そして、女性は一生のうちに様々なライフイベント、例えば、就学、就職、転勤、結婚、出産などに遭遇するが、過去にどのようなライフイベントを経験し、その時どのような選択をしたか、その選択の組み合わせの仕方でライフコースが分類されるとしている。
栗林氏らは、就職・退職・再就職(復職)の観点と、結婚、出産経験の有無から、大きく3つのライフコースに分類している。


A. 継続就業層:就職時から就業を継続中
B. 復職層:結婚出産を契機に離職し、その後復職
C. 離職層:結婚出産を契機に離職し、現在離職中


 年代別に各層の分布を見てみると(図3)、20代前半では就業を継続している人が7割を超える。25歳以上になると就業継続層は大きく減ってしまうが、「離職層」すなわち退職したまま離職中の人の割合はどの世代でもあまり差がなく、どの世代でも6割弱の人が何らかの形で働いていることが分かる。ところがその内訳を見ると、40代では結婚や出産を契機に一旦退職した後復職している人が多いのに対し、30代では既婚で子供がいても就業を継続している人の割合が高くなってくる。なお、先ほど見た図2でも、30代においては正社員の比率が20年間で上向いており、出産しても就業を継続する人が増えている傾向が読み取れると言えよう。
 栗林氏らの調査によれば、復職層は離職層と同様に、所得や家計、子供の教育、自身の健康など生活に関わる様々な不安を感じており、必ずしも満足のいく収入が得られていないことが推察されるが、それに対して就業継続層は、こうした不安をあまり感じていないことが明らかになっている。今の30代が60代になる頃のシニア社会では、女性も就業継続が多数派になり、生活に対する意識や将来に対する考え方も大きく変わっているかもしれない。

 

 

図3.png

(「図表1:ライフコースの類型の特徴」[1]よりグラフ作成)

図3 ライフコース類型の特徴

 

 栗林氏のご講演を伺った上で、さらにライフコースに関するディスカッションを進めたところ、女性特有の論点がいくつか浮かび上がってきた。
 一つは、上のグラフでも確認できるように、女性のライフコースは多様であるということだ。男性の場合には、定年を契機に人生の二毛作目が始まるという人が大多数であり、そのようなモデルを前提に議論をすることが可能である。しかし、女性の場合にはライフコースが多様であり、それを選択するきっかけもパターンも無数にある。そしてその違いは年代だけによって生まれるものではなく、生活価値観や家族構成、職場の状況などにも影響を受ける。よって女性のライフデザインを考えるにあたっては、一括りにせず、こうした多様性に対応できるアプローチを考えなければならない。
 もう一つは、女性では人生の一毛作目と二毛作目との境目が明確ではないという点である。男性は多くの場合、「定年」が節目となって一毛作目と二毛作目が分けられる。しかし女性の場合は、これまで見てきたように人によりライフコースや就業の形態が異なる。さらに、仕事を継続できたとしても様々な事情によりワークよりライフに重きを置かなければならない時期が出てくるなど、人により節目の時期も回数も様々である。そうした中でワークとライフのバランスをうまく操りながらしたたかに生きている女性にとって、人生の二毛作目との境目は分かりにくくなっているのではないだろうか。特にキャリアを持った女性は、退職後も"飛び続けて"いなければならないという意識が高いケースが多く、軟着陸が難しいということも指摘された。一方で専業主婦の場合は、子育て終了後のセカンドライフを自分のために生きたいと真剣に考え、二毛作目をイキイキと生きている女性が多いのではないかという意見も出された。
 こうした議論を通じて改めて指摘されたのが生活設計の重要性である。上で挙げられたようなライフコースの如何に関わらず、またライフコースの変化に伴う様々なリスクも視野に入れた生活設計を持つことが重要だろう。

 

 

 

2. 世代間のギャップとその背景

 

2.1 研究会での議論を通じて明らかになってきた世代間のギャップ

 

 第1回で紹介したように、男性と女性とではその後半人生に対する考え方が異なる。また上述のように女性のライフコースは多様であり、自ずとライフデザインの描き方も異なってくる。ところが、分科会を重ねるうちに、フルタイムで働く女性という点ではライフコースが似ているはずのメンバー間でも、世代により少しずつ考え方や価値観が異なるのではないかということを感じるようになってきた。そこで、研究会後半の具体的な議論においては、20~30代を「たんぽぽ」世代、40~50代を「ばら」世代と名付けてその違いに着目して議論を進めた。要所要所で団塊の世代の方々のご意見も伺いながら、3つの世代の比較も試みつつ議論を進めたところ、同じテーマでも世代間で現状認識や理想の姿が異なる場合が見られた。
 「たんぽぽ」世代(20~30代)は、今のシニア世代と自分達がシニアになった時とでは考え方も大きく変わっているだろうと思いながらも、シニアライフがどのようになるのか、自分はどう準備していけばよいのかが分からないことに不安を感じている傾向が見られた。その結果として、色々試せるようなしくみや、総合的に情報・選択肢を与えてくれるコンシェルジュサービスのようなものに期待している。
 一方「ばら」世代(40~50代)は、より現実的に、来るべき自らのシニアライフと向き合い、全ての基礎となる健康の維持とつながりの重要性を指摘している。その上で、様々な課題に対しては現実を受け入れ、その中でやりくりしようとする傾向にある。ばら世代は人生においていくつもの岐路を経験する中で自分の生き方をその都度選択してきており、色々な生き方を受け入れる素地ができているからではないだろうか。また、何らかの形で働いたり教えたりしながら社会に貢献したいという意識も強いように見受けられた。

 

 

2.2 世代間のギャップの背景となるもの

 

 このように世代間で価値観が違うことにはどのような背景があるのだろうか。そもそも60代を迎えるまでの時間の長さが違う。ばら世代にとって60代以降は確実にやってくる近い「将来」だが、たんぽぽ世代にとっては先行き不安で不透明な遠い「未来」である。たんぽぽ世代にとっては不確定要素が多いため、楽しみより不安が勝りがちなのは仕方のないことだ。このことはリサーチ・アンド・ディベロプメント社が行っている「生活総合ライフスタイル調査」CORE2013(2012年実施)のデータによっても示されている。図4に見られるように、老後の生活についてたんぽぽ世代の女性は、リストラや安定収入に対する不安や孤独や生きがいをなくすことへの不安を、ばら世代よりも強く感じているのだ(図中赤丸で囲った部分)。就労に関係する不安には、バブル期を経験したばら世代と長引く不況の中で就職したたんぽぽ世代という時代背景の違いも影響しているだろう。また、ばら世代は自らが要介護状態になって周囲に迷惑をかけないかと自身の健康を心配しているのに対し、たんぽぽ世代は親の介護を心配しているのも興味深い(図中青丸部分)。この辺りはライフステージの違いも影響しているだろう。

 

 

図4.png

図4 老後の生活で不安に感じること
(R&D社 CORE2013調査データより世代間の差が大きい項目を抜粋)[2]


 さらに、年代により社会進出の背景が異なることも一因かもしれない。ばら世代は、男女雇用均等法の施行(1986年)前後に就職した世代である。男女間の役割分担意識が強く、介護や家事に対する考え方などでも旧来の価値観を引きずっている過渡期におり、"所詮、社会は男性が担う"という環境下で生きてきた。そうしたばら世代の女性たちには「せめて自分たちは楽しく生きなきゃ!」という割り切りが感じられる。逆に、最初から男女平等な世界で男性と対等に伍してきたたんぽぽ世代の女性たちは、男女間の役割についても平等・共同という意識が強い中、社会も家庭も背負わなければならないという気概も感じられる。男女共同参画社会が現実のものとなる中で、将来に対する不安も大きくなっているのだろうか。
 一方で、先に紹介したCORE調査のデータによれば、理想のセカンドライフについて、たんぽぽ世代は「いろいろなことをやってみたい」「新しいことを始めたい」といった点でばら世代よりも「YES」と答える人の割合が多くなっており、将来に対しても意欲的に捉えている点は期待が持てる。同時に、「夫婦二人の生活を楽しみたい」「子供や孫に囲まれて楽しく暮らしたい」といった項目でも、たんぽぽ世代はばら世代を大きく上回っている。家族も大切にしながら自分としても新しいことに挑戦するという、自己実現と家庭とを両立させる意識の持ち方は、たんぽぽ世代のワークライフバランスの価値観の延長にあるのかもしれない。
 伊藤忠ファッションシステム株式会社(以下、ifs)では、育った時代による価値観の違いが消費行動を左右するという視点から「ファッション世代消費論」を唱えており、小原直花著『婦国論』[3]で詳しく紹介されている。この考え方をより深く理解するため、小原氏にご講演をお願いし、世代の違いの背景についてお話を伺った。ifsの分析によれば、1991年のバブル景気崩壊の前後で価値観に大きな違いが生まれており、その結果、バブル崩壊前に高校を卒業していた「プレバブル世代」(戦後~1973年生まれ)と「ポストバブル世代」(1974年生まれ以降)とでは、明らかに世代間の違いが見えるそうだ。これは40代~50代をばら世代、20~30代をたんぽぽ世代とする私達の区分とほぼ一致している。
 小原氏によれば、プレバブル世代は頑張れば報われる上向き指向の時代を知っており、社会への帰属意識やキャッチアップ、ランクアップに価値を置くが、ポストバブル世代は景気低迷や就職難などもあって頑張っても報われないことを経験しており、無理せず等身大で生きよう、小さな幸せを積み重ねていこうとするらしい。また、ポストバブル世代は社会や会社よりも家族や仲間を大切にするとともに、個性を大切にする教育の影響もあって多様な価値観を受け入れ、自分の満足や自分最適なことを求める傾向にある。このような世代間の基本的な価値観の違いが様々な要因と絡み合って、将来に対する考え方にも影響しているのであろう。

 

 

3. 第3回以降のテーマ紹介

 

 さて、これまでは女性のライフデザインについてその全体像を議論してきた。また同じ女性でも世代により考え方が異なるということも、その背景とともに見てきた。これらを受けて研究会後半の活動では、具体的なテーマを立ててより深く議論を掘り下げていった。メンバーの関心の高さ、男性と共通のテーマ、女性ならではのテーマなど、様々な視点から選び出されたのは、以下の6テーマである。第1回でも触れたように、各テーマはダブルタイトルのようにも見えるが、生活者の意識としては一緒に考えるのが現実的だろうとの考えからこのように設定している。


1.楽しみ方/学ぶ
2.働く/お金
3.介護/家事
4.暮らし方/住まい
5.つながり(家族・地域)
6.健康/美容


 これらのテーマはマズローの欲求階層説に当てはめると、図5のように位置づけられる。「介護/家事」といった生理的欲求に関わるものから、「楽しみ方/学ぶ」「つながり」のように自己実現に関わるより高次の欲求まで広くカバーしていることが分かる。また、「健康/美容」「働く/お金」など多くの欲求を実現させるための基礎となるようなテーマも取り扱った。

 

 

 図5.png

図5 マズローの欲求階層説による個別検討テーマの位置づけ

 

 

 各テーマについての検討はワークショップ形式で行なった。先に述べたように、同じ働く女性でも世代により少しずつ考え方や価値観が異なるという仮説があったので、ワークショップは、年代で2階層×2グループ(各4~5名)の4グループに分かれて行った。年代別の階層は、先に紹介した「たんぽぽ」世代(20~30代)と「ばら」世代(40~50代)である。
 各テーマについて現状の整理をした後、「2030年の社会」をターゲットとした理想の姿を考え、その実現に必要な要素/提案をまとめるという形で、議論を行った。未来の理想像を描いた後、現実の課題とのギャップを埋める解決策を考えるバックキャスティングのアプローチである。さらに個人で、そして全体で、未来に向けて理想のライフデザインを実現するためのアイディアの創出を試みた。
 こうしたアイディアについては、多様なライフコースとその変化に応じて自由に選択できるアラカルトメニュー形式で、生き方のヒントとしてまとめることも試みた。それぞれが自分なりのそしてその時々のライフデザインを描くことができるようにすること、そしてそのライフデザインを実現する様々なアイディアが、商品やサービスの形で提供されることを狙いとしている。


 以上、第2回は、女性のライフコースと世代間のギャップについて見るとともに、第3回以降に紹介する個別テーマについての議論の枠組みを紹介した。次回以降は、個別テーマについての議論を進めていく。現状の課題や理想の姿、それを実現するためのアイディアなどを、テーマごとに紹介していきたい。


考文献

[1] 栗林敦子(リコー経済社会研究所)・井上智紀(ニッセイ基礎研究所)「現代女性のライフコースと金融行動―生活経済リスクとしての非婚・晩婚・離婚に女性はどう対応するか-」 2011年7月。
[2] 株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント「生活者総合ライフスタイル調査」CORE2013(2012年実施)。
[3] 小原直花『婦国論-消費の国の女たち-』 2008年、弘文堂。

 

東京大学ジェロントロジー・ネットワーク
WG8D 女性のライフデザイン研究会“L90” 参加者:17社30名(うち、女性24名、男性6名)

【第2回編集担当】株式会社富士通総研 経済研究所 倉重佳代子   
【調査分析担当】株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント 真坂美緒